アナログ放送が終わりデジタル放送に切り替わった。子供の頃に、初めて白黒画面のテレビを見たのは町の公民館であった。当時、何軒かのお金持ちの家にはテレビがあり、近所の人たちがテレビ見せて下さいと言って行ったものだ。私も午後6時ごろからテレビを見に出かけたものだ。
よく近所の人たちが「テレビジューン」と言っていたが、それは「テレビジョン」の事であり正確な発音ではなかった。今までテレビなど見たことがないのだから仕方がない事だ。それから2,3年後に我が家にもテレビが入った。
当時見た番組と言えば「月光仮面」、同じ町内には唐草模様の風呂敷をかぶりプラスティックのサングラスをした豆月光仮面が大勢いた。スーパーカブというオートバイには乗れないので、豆月光仮面の集団が自転車に乗り畑の中で我こそは月光仮面と自負して、「トオー・・・サタンめ・・・」などと遊んでいた。全員が主人公になりきり、悪役を誰もしたがらなかった。
テレビが普及するまでは、紙芝居が路地の空き地に来ては盛んに人だかりがしていたが、テレビが紙芝居に変わった。弁士つき静止画像劇場から音声の伴う動画(番組)へと時代は変遷した。紙芝居屋さんの太鼓が響けば、どこからともなく子供たちが集まり、水あめを買って紙芝居を見た頃の遠いい記憶が頭のどこか片隅にある。そんな事を考えながら鉢植えの「トラディスカンティア」を眺めていた。斑入りの葉っぱと語らうひと時がそこにあった。
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